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ケロニアの味わい

ケロニア

  吸血植物 ケロニア ~ 『ウルトラマン』 第31話 「来たのは誰だ」           ラァーヴ!!

 ウルトラ怪獣には、“人型不気味系”とでも名状すべき儕輩が存在します。人間の体型が偸閑で、専ら怪奇ムードで魅せる彼ら。ケムール人やダダなど、この種に分類されるものは、シリーズにおいて決して主流という訳ではありません。破壊スペクタクルの醍醐味を約束する“王道系”(レッドキング・ゴモラなど)や、講じた策略でスリリングな展開へと誘う“知能犯系”(メフィラス星人・ガッツ星人など)。こういった怪獣なり宇宙人なりが登場する娯楽劇を主菜とするのならば、その間隙を縫って供される恐怖劇は謂わば副菜、詮ずる処の「箸休め」。つまりケムール人だのダダだのの不気味系統にあっては、レッドキングやらメフィラスやらの味物を惹き立てる為の“ツマ”なのかもしれません。
 ですが此奴ら。そんな添え物みたいな立ち位置に甘んじて終わるような、大人しい手合いでは断じてございません。時にはピリリとした辛口を効かせたり、得も言われぬ蘞(えぐ)みで我々の味覚を痛撃します。劇甚な刺激で爪痕を印すスパイス、若しくは腐乱風味がクセになる醗酵食品といったところでしょうか。尤も飽くまで脇役の彼ら。出番はそう多くありません。いやしかし稀少で出し抜けであるからこそ、刹那に鮮烈なインパクトを放つとも言えるでしょう。心構え無き者の油断した舌を容赦無く侵し、問答無用に後味遺す奴等のスタイル。度し難い不味さは、ややもすれば風味絶佳をも凌駕するのです。
 幼少の砌、そんな不気味系の中にあって特に私を心酔させたのが、吸血植物ケロニアでした。植物ならではのアシメトリーという見端の怖さも然る事ながら、あの容貌で高等知能を有するというミスマッチ。宇宙生物という訳でもない、南米奥地の秘境に出自を持つ、割りと身近で不意を衝くプロフィール。人語を解し、スーツにだって袖を通す歴とした文明人っぷり。などなど。
 いや勿論、昭和往時に上掲のような小賢しい事を沈思した筈もありません。入り口は先ず、生理に直接訴えるあの見た目。人型のフォルムを準える葉身の重畳と、その深緑の中からギラつかせる三白眼。取っ掛かりはそれだけ。幼かった私の心を奪うのに、他に何が必要ありましょうか。シュルレアリスム画家のマックス・エルンストは、植物・動物・鉱物が混然一体となった森を好んでよく描きました。中でも例えば『生きる歓び』(1936年)と題された作品に相対すれば、不安感と共に「怖いもの見たさ」さえ誘発されましょう。畏怖と好奇が鬩ぎ合う妙味。似たような味わいを、我が幼き舌根はケロニアに見出したのかもしれません。そして向後、私自身この緑色の怪人への賞翫と称揚とを、已める事はないのでしょう。きっと。 (怪獣ラァーヴ)


Data :

  • ケロニア : 『Monster Gallery』シリーズ No.20 原型:小浅和大 (怪獣無法地帯 1999年)

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