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2010年11月

白き言霊 ~H少年からの贈り物 その9~

シーボーズ
亡霊怪獣 シーボーズ ~ 『ウルトラマン』 第35話「怪獣墓場」 ラァーヴ!!  
 
 

 一年の殆んどを氷雪に囲まれて生活するエスキモーには、「白」を表現する語彙が豊富であると間々聞き及びます。一説では数十種類だとか。真偽はどうあれ。「何も無い色」と捉えられがちな白ですが、それが自分たちの営為、況してや生命に深く関わっている圏域では、その“無色”から沢山の情報を読み取らなければならず、遵って充分有り得る話しなのでしょう。
 この「何も無い色」という概念。スペイン語圏では「白」を“blanco”(ブランコ)と表記・発音し、イタリア語は“bianco”(ビヤンコ)、そしてフランス語では「モン・ブラン」でお馴染みの“blanc”(ブラン)となります。いずれも「何も無い」という含意があり、英語の“blank”(ブランク)なんかも、これの同義派生語に相当。面白いのは、ブランコだのビヤンコだの「白色」を示す言葉が、英語では“black”(ブラック)、つまり「黒色」として伝播したことです。土地柄や文化、そして国を違えば、「何も無い色」が白になったり黒になったり。言語は、それを使う人びとを映し出す、まさに鏡なんですね。
 さて日本語には「ほんのり」だとか「はんなり」だとか、幽かで微妙なニュアンスを表現する言葉が数多く存生します。風流を好むお国柄からなのでしょうか。水をいっぱいに汲んだ甕を覗き込んで、そこに有るか無きかの蒼みを見い出す、所謂「甕のぞきの色」なんかは、そういった古人の繊細な感覚の顕われでしょう。また、かき氷に無色透明のシロップを浸潤させて食す“氷すい”なんて酔狂も、「侘び・寂び」の理念がいまだ日本人の中に息衝いている証左のような気がします。
 しかし一方で、昨今のTVニュースを見れば、ちょっと難しい漢字を安易に平仮名で表記してこます趨勢ではありませんか。真綿でじわじわ絞め殺す「言葉狩り」に、少なからず危惧を覚える日日また日日です。曾てスターリンは、自身の出生地であるグルジアの言語を、「犬の言葉」などと詰って弾圧しました。人間が本気を出せば、言葉なんて簡単に死に絶えるもの。変化変容はあるべきだと思いますが、絶滅はダメでしょ、絶滅はー。
 ところで本項文頭に記した“エスキモー”ですが。これも「生肉を食べる者」という誤った解釈から、カナダ政府によって差別用語と位置付けられ、“イヌイット”に置き換えられてしまいました。この頓狂な曲解に、ご丁寧にも準じたのは日本のマスコミだけだったとか。エスキモーたちが白い世界からどれだけ多くの色味を見い出しているか、そして彼ら自身が“エスキモー”の呼称にどれだけ誇りを抱いているか。それを慮外に置く者の、何と想像力を欠いた蛮行であることか!
 写真の人形は、白の成型色に薄っすらと黒のスプレーが掛けられただけの、その名も“亡霊怪獣”。これを「ただの手抜き」と断じて、無下に斬って棄てるか。それともこの白き亡霊に、仄かで幽かな、しかし確たる存在の拍動を感じるか。繊細さを推し量る試金石は、喉元に刀の切っ先を突き付け、斯く言います。さぁ、オマエはどっちなんだ?(怪獣ラァーヴ)



Data :

  • シーボーズ : 『ウルトラ怪獣シリーズ』No.22 (バンダイ 1991年)

殉死を偲んで ~H少年からの贈り物 その8~

ドドンゴ
        ミイラ怪獣 ドドンゴ ~ 『ウルトラマン』 第12話「ミイラの叫び」    ラァーヴ!!  
 
 

 黄金の肢体に、目も醒めるような青磁色。虚空に向けた咆哮は、亡き主人を追慕してか。その健気さは、まるで神社仏閣の門前に置き据えられた狛犬の如し。心許り綾をつけた前肢の、まあ何て愛くるしいこと!尚、両翼左右取り違えての発売は、ご愛嬌。
 ドドンゴのブルマァク人形については、遠い昭和の昔日を捉えた一葉のスナップの想い出と共にあります。この凛々しい忠犬を聢と胸に抱き、何故か不安げに前方向のレンズを睨み据えている幼き日の自己。両眼を潰された揚げ句に屠られた凄惨な最期を悼んでか、せめて模像だけは庇護して遣りたいと強く思う童心の顕われ?いえいえ、人形の実際の所有者が自身ではなく友だちであり、刹那の愛顧権を単に儚んでいたのでしょう。きっと。
 躯体側面を奔る鬣の造作に、河川の水流を重ね見ます。詩人エミリー・ディキンソンは詠いました。“あなたの小さな胸に小川をお持ちですか?”。幼少の砌に一度なりともドドンゴを胸に抱いた者ならば、ハハァン、持っていますとも、小川のせせらぎくらいさぁ。オレもH少年も、ね!(怪獣ラァーヴ)



Data :

  • ドドンゴ : ブルマァク復刻版 限定復刻ウルトラマン生誕25周年記念 (バンダイ 1991年)

愛しの怪獣(ベイビー) ~H少年からの贈り物 その7~

ジラース
     エリ巻恐竜 ジラース ~ 『ウルトラマン』 第10話 「謎の恐竜基地」    ラァーヴ!!  
 
 

 バンダイ製のスタンダードサイズによるジラースのソフビ人形。とは言えこれ、『ウルトラバトルゾーン 怪獣大決戦場』なる大型ジオラマ商品(サウンドギミック付き)に、ウルトラマンの人形共々同梱された、謂うなればイレギュラー物。1995年発売で、1998年にはこのジラースのソフビ人形が、単体で再販されました。成型色の光沢から推して、写真は前者、つまり95年版と思われます。
 小売価格は9800円。恵まれていた事に気付かなかったH少年が、買い宛がって貰った、またもや高額商品。発売時季は年末、ならばクリスマスプレゼントでしょうか。幼い体躯に比して、余りにもデラックスな包装箱。を前に、欣喜雀躍する昔日のH君の姿が、思い浮かぶようです。
 そもそもはゴジラ。なんて野暮天は、この際措くとして。血走った赤黒い口腔内に、先ずは獲物を噛み砕く歯列と、食塊を嚥下する前に篤と味わう舌。目も醒めるような赤と白のコントラストは、捕食者の証し。思いの丈威嚇してみせる野性が、ソフビ人形の暖か味ある造型でありながら、健気にも燦然と光輝します。かわいいじゃあありませんか、ねぇ、二階堂教授!(怪獣ラァーヴ)


    ウルトラバトルゾーン 怪獣大決戦場

Data :

  • ジラース : 『ウルトラバトルゾーン 怪獣大決戦場』 (バンダイ 1995年)

ケレンな斬れ味 ~H少年からの贈り物 その6~

ギロン
     大悪獣 ギロン ~ 『ガメラ対大悪獣ギロン』                    ラァーヴ!!  
 
 

 ゴジラの後発となるガメラは、兎に角も露骨なケレン味を前面に打ち出し、王道邁進するゴジラに飽食した餓鬼共を取り込み、破廉恥な邪道へと教唆煽動してきました。5作目に登場したギロンの外貌なんかは、そういった作品性の旗幟が鮮明であり、「ガメラがどんな窮地に見舞われるか」が明々白々。“切ったぞ 突いたぞ ゴーゴーゴー”なんて謳ってる主題歌を、威風堂々と地で行ってますね。
 何処となくサメを髣髴とさせる顔立ち。ノコギリザメとかハンマーヘッドシャークとか、成る程日用工具に見立てたネーミングが実存するサメですが。それにしたって包丁をそのまま頭に戴かせちゃう、良く言えば潔さ、悪く言えば浅墓さ。強引な発案とやっつけなデザインは、これはもう火を見るが如し。斯くて生物として余りにも不自然でグロテスクな姿が誕生、その刃を銀幕の中でギラつかせたのです。
 とは言えインパクトは抜群!こういう手合いにやられちゃうんですよね。コロッと。思慮分別の未熟な子どもたちは。私も大好きでした、ギロン。映画は観ずとも、怪獣図鑑の写真を矯めつ眇めつしては、この包丁頭に心酔したものです。ガメラなんか全く知らないH少年も、恐らくはそうだったのでしょう。玩具店で此奴めと出遭って...。(怪獣ラァーヴ)


    

Data :

  • ギロン : 大怪獣ガメラシリーズ 『ガメラ対大悪獣ギロン』より 大悪獣ギロン (バンダイ 1992年)

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